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Part4(2004・4)
大隅横川駅を出たあと。
「はやとの風4号」車内では、客室乗務員さんがハーブティー(300円)の販売を始めました。
レモン風味のするこのハーブティーを、ワタシもいただくことにしました。

リラックス効果があるとよく言われますが、確かにそのとおり。長閑な景色を眺めつつ、このハーブティー、和みますねぇ・・・。
14時2分、列車は栗野に着きました。

この駅の近所も、桜の木が多いようですねぇ。
写真には写りませんが、花びらが風にはらはらと舞う光景が見られました。
14時13分、「はやとの風4号」は終点・吉松に到着しました。
本当に、桜島あり、山の美しい自然あり、そして桜あり。
いい沿線ですよねぇ・・・。

ここ吉松で駅舎の外へ出てくるのも、このとき以来、ですねぇ。
こちらは、駅近くに保存されているSL・C55-52。
屋根がかけられてからの保存状態は割合良好なようです。
ここで、今回、「吉松名物」といわれているあるものを買いに、駅から歩いて3分ほどのこの場所へやってきました。
「みやした菓子舗」、御菓子屋さんです。ただまぁ、お店の横に客車を模したものが・・・実は、この「客車」がお菓子を作る作業室なんだそうで・・・。(^^;)
看板も出ていますように、このお店の名物はこちらの「汽笛まんじゅう」。
かつて肥薩線や吉都線を走ったSLの基地だった鉄道の町・吉松にふさわしく、燃料の石炭をかたどったというこのまんじゅう、自然原料だけを使用した揚げ饅頭になっています。

こちらの「汽笛まんじゅう」は6個・8個・10個などの箱入りがメーンですが、私は土産用に8個入りを買ったあと、それと別にすぐ食べられるようにと1個(80円)をバラ売りしてもらいました。
早速食べました。中は白あんが・・・。本当に素朴なお味でした。

なお、ここ「みやした菓子舗」では、鹿児島名物で有名な「かるかん」もオリジナルで作っていまして、そちらも買って食べてみましたが、いわゆる一般的に名前が通っている御菓子屋さんのものとは違って、素材の味がより強く感じられる、これまた素朴なお味でした。
駅に戻ってきました。
左には先ほど乗ってきた「はやとの風」が、折り返し鹿児島中央行きの「3号」として発車待ち中。そして右側には、これからワタシが乗車するキハ140形「しんぺい」が停まっています。

スイッチバックあり、ループ線ありと山岳鉄道の醍醐味を味わえる肥薩線人吉〜吉松間を、のんびり走る観光列車「いさぶろう」(下り)、「しんぺい」(上り)。(愛称の由来はこちらをどうぞ)
以前は「最後の国鉄型気動車」でもあるキハ31形を簡易お座敷仕様にして使用していましたが、この3月13日ダイヤ改正から、近郊型のキハ140形気動車を改造した新しい専用車両がお目見えしました。
その新しい改造車・キハ140-2125の車内へ入ってみましょう。

特急として走る「はやとの風」とは違い、「普通列車」扱いとなっているこの「いさぶろう・しんぺい」の場合は、ボックスシートを基調としたシート配置。
やはり、木材を多用しています。天井のつくりなどはかなり「はやとの風」との共通点も多いようですが。
人吉方乗務員室の妻面には、液晶テレビがとりつけられ、前面展望を映し出すようになっていました。乗務員室にカメラが設置されているようです。
車内中央部には、これまた「はやとの風」と同じつくりの展望席。
この改造車デビューから指定席が設定された「いさぶろう・しんぺい」ですが、この席はフリースペースとして、指定なしの乗客でも利用できるとのこと。

この列車でも、ワタシはここに陣取ることにしました。
14時48分、「しんぺい」は吉松を発車しました。
吉都線と分かれ、まずは山を登っていきます。
トンネルに入ると、車内はこんな感じ。
暖色系の照明って、いいですよねぇ。
「しんぺい」は、最初の停車駅である真幸に到着です。
ホームにある「幸福の鐘」のことは、ここでも書きましたね。

列車はスイッチバックをして、さらに山を登ります。
山を登り続けることしばらく。
進行方向右手には、「日本三大車窓」のひとつに数えられる雄大な景色が広がります。霧島連山のふもとにあたる一帯です。
列車はいったんストップ。お客さんにじっくり景色を見てもらおうというサービスで、運転士さんからはこの景色についての説明もアナウンスされます。

このずっと右側の方向に、遠く桜島が望めることもあるということですが、さすがにこのときはガスってました。
列車は、肥薩線のサミット・矢岳に到着しました。

少し停車時間がありましたので、駅前にも少し出てみました。
文字通り山間の小駅、この鄙びたたたずまいは健在です。
矢岳を出ると、山下り。
ループ線を右回りでまわりながら下りてくる途中で、右手に大畑駅のスイッチバック線が見えてきました。

ぐるっと回ってスイッチバック線に入り、折り返して大畑駅の構内へ入っていきます。
駅の構内にも、桜が・・・。きれいですねぇ。
15時45分、「しんぺい」は大畑駅に到着です。
大畑の駅舎も、すっかり周囲の風景の中に溶け込んでいて、非常にいい感じです。

このあとは人吉へ向けて、さらに山を下ります。
大畑を出て、列車は人吉盆地へ下りてきました。
沿線には、ソメイヨシノ以外に八重桜が咲いているところもありました。

この先、球磨川を渡ると・・・。
15時59分、「しんぺい」は終点・人吉に到着しました。
1時間11分、本当に充実した乗り鉄でした。

ここからは、帰路ということになるわけですが・・・。
手前の1番ホームに、次の列車が停まっています。
その列車はこちら。
「九州横断特急8号」人吉16時8分発、熊本経由別府行き。
キハ185系3両編成での運転です。

この列車はさきほども触れたとおり、人吉から熊本・阿蘇を通って別府まで走るということで、中部九州の観光客移動を意識した設定になっています。沿線には阿蘇山あり、球磨川あり、別府や人吉も含めて数多くの温泉あり(バスなどで足を伸ばせば、あの黒川温泉も十分圏内ですね)、そして滝廉太郎作曲「荒城の月」のモデルとなった岡城址で知られる豊後竹田のように城下町もあり、ということで、非常に魅力的なエリアです。

この日の充当車両は、さきほど熊本で見かけた「九州横断特急」専用カラーの車両ではなく、以前の「ASO YUFU EXPRESS」のロゴのままの車両でした。
私は最後尾・1号車の指定席に乗り込みました。
人吉発車時点で、この車両はワタシ1人でした。
定刻より若干遅れて、「九州横断特急8号」は人吉を発車しました。

この列車にも、車内販売を兼ねて客室乗務員さんの乗務がありますので、ワゴンが来たとたん、「ビールをください!」(爆)

日奈久ちくわといっしょにいただきました。
人吉を出て次の停車駅は、渡。急流下りの発船場があるところです。
ちょうどホーム向かい側に、別府からやってきた「九州横断特急3号」が到着。
向こうは、専用塗色のキハ185系2両編成でした。
列車は、球磨川とともに下っていきます。
この駅は一勝地。肥薩線にはやはり、味のある駅舎が多く残っています。
この川沿いでも、桜並木が見られる区間が所々にあります。
だいぶ葉桜にはなりつつありましたが・・・満開のときはきっとすごいんでしょうねぇ、おそらく。
肥薩線内最後の停車駅・坂本までやってきました。
向かい側には、下校の高校生たちを乗せた下り普通列車のキハ31形がやってきました。
17時7分、「九州横断特急8号」は八代に到着しました。
自由席のほうで乗り降りしたお客さんが何人かいたようでしたが、指定席は依然としてワタシ1人・・・。
列車は次の停車駅・新八代へ。
ここで初めて指定席に、ワタシ以外の乗客数名が乗り込んできました。
新幹線からの乗り継ぎかと思われますが・・・。
こちらは、宇土付近。
新八代から北へ向かう新幹線の高架が、だいぶ立ち上がってきていました。
17時35分、「九州横断特急8号」は熊本に到着しました。
ワタシはここで下車します。

列車はここから進行方向が変わり、豊肥線へと歩みを進めていきます。
次の列車への乗り継ぎ待ちの間、少しホームを歩きました。

熊本駅、および運輸センター構内には、3月13日ダイヤ改正で役割を終えた急行「くまがわ」に使用されていたキハ58・65形気動車が所在なさげに佇んでいる姿が多く見られました。
ここ熊本からは、17時54分発、特急「リレーつばめ18号」に乗車して博多を目指します。
列車は、787系BM7編成7両編成でやってきました。
熊本を出た列車は、夕日が差し込む中を北上していきます。

そろそろお腹も空いてきました(笑)ので、人吉で買い込んでおいたこちらの駅弁を食べることにしました。
「鮎ずし」(890円)。このときにご紹介した「栗めし」と同じ業者さんがつくっているものですが・・・これまた、鮎は頭から尾びれまで、残さず食べられました。

これで、この日は鮎を2尾は食べましたね、間違いなく・・・。(笑)
時間が時間だけに、日は暮れて、徐々に薄暗くなっていきます。
列車は筑後川を渡っていました。
19時7分、「リレーつばめ18号」は博多駅3番ホームに到着しました。
すっかり日が暮れてしまいましたね。

ここからは885系「ソニック51号」に乗り継いで黒崎へ帰ります。
ということで、今回の日帰り旅、いかがだったでしょうか?

なんと言っても今回は、桜の花が見られる時期に出かけられてよかったと思いました。
そして、美しい桜の国に生まれて、本当によかったと思いました。

3月13日の九州新幹線開業のときは、冒頭にも書いたようにとにかくお祭り騒ぎだったので、一度ゆっくりと静かに南九州の乗り鉄を楽しんでみたいと思っていました。
平日だったこともあり、列車が混み合うという場面に遭遇することもなく、のんびりと楽しむことができました。本当でしたらもっとゆっくり旅程を組み、温泉にでもつかりたいところでしたが・・・。まぁ、それは今後のお楽しみにとっておくことにしましょう。

九州新幹線で確かに南九州はより身近な存在になりました。しかし、速い旅だけでは面白くない。
より人間の生きるリズムに近い形で、スローな旅を楽しめれば・・・今回の旅は、そのことを可能な限り意識しようと努めたつもりです。
みなさんも、新幹線につながる観光列車のラインナップが充実した南九州で、ぜひのんびり旅を楽しんでいただきたいものです。
<おわり>