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Part5(2003・10〜11)
11月1日の朝。
ホテルを出て、西鹿児島駅へやってきました。

この駅の看板が、「西鹿児島駅」から「鹿児島中央駅」に架け替えられるまで、あと4ヶ月半、ですね。
この日は、まず鹿児島線を北上します。

乗車する列車は、6時25分発「つばめ2号」博多行き。車両はもちろん、「つばめ形」787系ですが、この日はその787系「つばめ」のトップナンバーであるBk-1編成7連が充当されていました。

この旅の時点で、「ニューつばめ」へのリニューアル未施工で残っていた「つばめ」用7両編成は全12編成中、このBk-1編成と、Bk-4編成の2本のみ、となっていました。いまや、この未リニューアル車に乗るほうが、確率的には難しくなってしまいました。
ただ、このBk-1編成の1号車・グリーン車のクモロ787-1の車内は、シートモケットが茶色系のものに交換されているなど、すでに「ニューつばめ」の毛色が入ってきていました。
おそらく、この後に行われるであろうリニューアル工事の作業の進行をスムーズに進めるためのものかと・・・。
まだ明るくなりきれていない空の下、「つばめ2号」は西鹿児島を発車しました。
左手に鹿児島総合車両所の留置線を見て、一気に加速していきます。
きょうの朝食。
また西鹿児島駅で買い込んできた駅弁です。
この駅弁は、「さつま鳥めし弁当」(710円)。きのう食べた「とんこつ弁当」と同じところが作っているものです。そのせいか、上に見えるわさび漬けをはじめ、共通のおかずがいくつか見受けられました。

食後は、客室乗務員さんが持ってきてくれたドリンクサービスのホットコーヒーを飲んで、一息・・・。
次第に空は明るさを増していきますが・・・どうやら曇っているようですね。天気予報では、夕方から雨も降るという予報になってましたから、下り坂なんでしょう。
ここは、西方付近の東シナ海沿いの区間。この区間も、4ヶ月半後には第三セクターに移管され、特急は走らなくなってしまいます。
列車は出水に到着。

右手のほうには、すでにその第三セクター鉄道である「肥薩おれんじ鉄道」の車両基地が整備されていました。旅客車両となるHSOR-100形気動車もすでに搬入されてきていまして、試運転も盛んに行われているようです。
少し眠気も襲ってくるころ、甘いものでもとって頭をはっきりさせようか、ということで、ワゴンサービスからこちらの品を買い求めました。
こちらは、季節限定メニューの「焼き芋プリン」(220円)。いい感じにまろやかな風味に仕上がっていました。
熊本県内に入って、水俣、佐敷と停車し、列車は「海の上を滑るように走る」区間である八代海沿いの区間に入ってきました。
天気が相変わらず悪く、どんよりした状態だったのが残念でした。

ここを過ぎれば、ワタシの下車駅である八代はすぐそこです。
荷物を準備していると、客室乗務員さんが「あと5分ほどで八代でございます。お忘れ物のないようにご準備ください」と声をかけてくれました。
グリーン車内の車内改札は客室乗務員さんの担当ですので、こちらの下車駅をもちろん知っていたわけで。

で、荷物を準備してデッキへ立ったところ、その客室乗務員さんが声をかけてきました。

客室乗務員さん 「あの、グリーン豪遊券ってきょうで最後でしたよね?」
ワタシ 「そうですよね。今回で使うのは4回目なんだけど、本当にいいきっぷだったので残念ですよね」
客室乗務員さん 「ほんと残念ですよね。・・・きょうはこれからどちらへ?」
ワタシ 「これから人吉へ行って、温泉につかってきますよ」
客室乗務員さん 「そうですか。ではこの先もお気をつけて」


ということで、「つばめ2号」は8時34分に八代に到着。客室乗務員さんの笑顔のお見送りを受け、ワタシは気持ちよく列車を降りました。

こういうなんでもないような客室乗務員さんとのコミュニケーションが、実は「つばめ」という列車の隠れた魅力というか、旅の盛り上げに一役かっていたりするわけで。ビュッフェがなくなってそういう機会が減ったとはいえ、やはり基本のところは変わっていないんですよね。
では、さきほど客室乗務員さんに説明したとおり、人吉へ向かうことにしましょう。

乗り継ぐ列車は、8時49分発、急行「くまがわ1号」人吉行き。先行の「つばめ1号」が遅れていたため、この「くまがわ1号」も遅れてやってきました。
車両は、キハ58・65形の2両編成。日本最南の急行列車は、いまでも急行形車両で走り続けています。
列車は八代を出て、球磨川に沿って山へ向かいます。
ディーゼルエンジンのうなりを響かせて・・・。

はじめはこのように、進行方向右側に川が見えていますが・・・。
しばらくすると、列車は川を渡り、今度は左側に川が見えるようになります。

このあたりはダム湖になっていますので、本当に静かで穏やかな川面になっています。本来は、最上川、天竜川とともに「日本三大急流」のひとつに数えられる川。ダム湖が途切れた先には、川下りで知られる急流が待っているわけです。
9時45分、「くまがわ1号」は終点・人吉に到着しました。

ここまでやってくるのは、およそ2年ぶりのこと。
駅舎の一角では、ちょうど人吉で行われていた「熊本県民文化祭」の企画の一環として、肥薩線の魅力を紹介する展示コーナーが設けられていました。
確かに、この肥薩線という路線は魅力の多いところです。
ここからですが、あるところへ向かうために、列車でさらに移動します。

乗車する列車は、10時14分発、季節臨時列車の8229D列車吉松行き。1両のみのワンマン運転で、キハ31-16が充当されていました。キハ31形気動車は、国鉄の分割民営化直前に投入された、いわば「国鉄のJRへの置き土産」。

この人吉から吉松へ抜ける区間は、ループ線やスイッチバックなど、険しい山々を越えていくためのさまざまな工夫が凝らされている区間です。
8229D列車は10時14分、人吉駅を後にしました。

季節臨時列車の扱いながら、車内には思ったよりもお客さんが乗っていました。
人吉を出た列車は球磨川を渡って、いよいよ険しい区間へ突入します。

すでに、このあたりから勾配がきつくなってきます。写真は車両の最後尾から後ろへ流れる線路を撮ったもの。
列車は、大畑に到着しました。

この大畑は、SLでも登れるよう勾配を緩くするために敷設されたループ線の途中にある駅。しかも、スイッチバックがあるという、全国でも非常に珍しい駅です。
大畑を発車しますが、まずはいったん「退行」、つまりバックします。
スイッチバックの引上線に入り、そこから再び向きを変えて、次の駅へ向かう本線に入っていきます。

この大畑は急勾配を登る途中に作られた駅。駅部分を水平なところにつくるための、まさしく先人の知恵がこのような配線となっているわけで・・・。
スイッチバックを抜けると、列車は再びループ線を左に回りながら坂を登っていきます。このループ線、カーブ半径はわずかに300m・・・。

坂を登る途中で、突然列車のスピードが落ち、止まるか止まらないかというところまで減速しました。
案内放送を聴いていると、左後ろのほうに、さきほど列車が入ったスイッチバックの線路が見えるということで、見てみると、左下の写真のようにほら・・・。
写真の左手奥のほうに、林に隠れていますが大畑駅があります。
列車は再び加速し、何度かトンネルに入りながら山登りを続けます。
大畑駅から、次の駅までの間に、標高差240m余りを一気に駆け登ります。最大勾配は30.3パーミル、つまり、1km進むと30.3m高くなる勾配。列車の速度は、わずかに30km/h。本当に、そろりそろりと登っていきます。
10時52分、8229Dはこの肥薩線のサミットである矢岳に到着しました。標高537mのところにあります。
ワタシは、ここで降りることにしました。

ここで列車を降りたワタシを、車内の人たちは「何でここで降りるの?」というような目で見ています。
ここはまさしく、山間の「秘境駅」。駅の周辺に人家は数軒ありますが・・・。実際、この駅の1日あたりの利用客は30人。2日前に訪れた宗太郎駅ほどではありませんが、やはり背中に刺さる視線は・・・。(^^;)
ところが・・・。

この駅には、車で見物にやってくる人たちがいるんですよね。
写真に写っているホーム上の人たちは、列車で来たのではなく、車で見物に来た人たちでした。
列車は1分ほどの停車で発車していきました。

では、駅をじっくり見てみましょう。
ワタシ、以前の旅で、当時の急行「えびの」で初めてここを通ってから、一度ぜひ下車してみたいもんだと、ずっと思っていたものですから。

駅の正面入り口です。
いいたたずまいを残していますね。
駅舎の中、そして、ホーム側。

もう、言葉で細かく書くこともないでしょう。本当にいい雰囲気です。
さて、この駅のすぐ近くには、SL展示館があります。

中を覗いてみますと・・・。
こちら、この肥薩線で使われていたSL・D51-170が置かれていました。屋内で保管されていることもあり、外板も美しい状態を保っていました。
一方、D51の隣に、もう1本の線路が敷かれています。
ここにはかつて、8620形蒸機の58654号機が置かれていました。

58654・・・この車号でピンと来た方もいるかもしれません、58654号機は1987年にJR小倉工場で復活をとげ、現在は「SLあそBOY」として活躍しています。
ここでも思い立って、携帯電話を開いてみました。
やっぱり・・・ここも圏外でした。(^^;)
駅を出て、少し離れたところから眺めてみます。
周りの風景の中に、駅がすっかり溶け込んでいるなぁと、感心して見ていました。
この駅での滞在は、およそ1時間。
先ほどここまで乗ってきた列車の折り返しでやってきた、11時51分発、人吉行きの8234D列車に乗ります。

で、矢岳に着いたこの列車から、団体客が15人ほど、わんさと降りていきました。
ビールの入った箱を持って降りていましたので、外で宴会でしょうか?
この駅でこんなに人が降りる、というのも、珍しいことなんでしょう。
8234Dは急勾配を下り、12時17分に人吉に到着しました。

そろそろお腹の空く時間ですが、駅を出た私は昼食の前に、こちらの場所へ。
ここは人吉旅館。目的は立ち寄り湯をさせてもらうためでした。ここでは以前にも一度、立ち寄り湯をさせてもらったことがありました。

入湯料500円を払い、回廊を通ってお風呂へ向かいます。
前回のときにも紹介しているとおり、ここのお風呂はかなり深い浴槽のなかに、木製のベンチが据えてあり、腰掛けてゆったりしながら入浴を楽しめる、という仕掛けになっています。
今回もワタシ一人の貸しきり状態。短い時間でしたが、本当にさっぱりしました。

次こそは、泊まりでゆっくりこのお風呂に入りたいですなぁ・・・。
駅へ戻ってきました。
ここで昼食、となりますが・・・。

ここも駅弁がありますので、せっかくですからそれをいただくことにします。
こちらの「栗めし」(890円)。「鮎ずし」とともにこの人吉の名物駅弁です。
栗の形をした容器を開けると、ご飯の上に大きな栗の実が・・・。おかずも程よく味がついたものが多く、ご飯も進みました。コンパクトで内容的にもまとまりのある弁当、という印象でした。おいしかったです。

昼食が終わったら、次はあの名物列車の登場です。
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