Part1(2005・6)
2005年6月。JR九州から、「SLあそBOY」の運行、8月28日にピリオド、という衝撃の発表がありました。

JR発足翌年の1988年、それまで肥薩線矢岳駅横で静態保存されていた8620形58654号機が、JR小倉工場での整備を経て復活してからすでに17年。JRグループで運行されているSLのなかでは最高齢の【83歳】を迎える58654号機の車体は、急勾配線区を走り続けてきたその負担の大きさからか台枠のゆがみという重傷を負い、もはや単独での列車牽引ができない状態になっていました。

運行終了の発表があってから最初の運転日となった6月25日、前回の乗車時にDL牽引となってしまったために再度チャレンジ、と思って計画していた出直しの乗車が、まさかこんな状況下になってしまうとは・・・。
朝、黒崎駅。

ここから、「リレーつばめ3号」に乗車して、熊本へ向かいます。
車両は、787系BM6編成プラス、BM109編成の合計11両。
今回は、各方面からネット仲間が集まりますので、1号車のグリーン個室「サロンコンパートメント」を押さえました。

なんだか、このところよく、この個室を使ってます。

個室でのんびりくつろいでいるうちに、列車は早くも多々良川を渡っています。
博多からは客室乗務員さんが乗務しますので、さっそくグリーン車サービスのドリンクをお願いすることにしました。

実はこの春から、JR九州の特急ではグリーン車のドリンクサービスに変化がありました。
客室乗務員さんが乗務する列車を除いて、昼行特急での車内販売がなくなった、ということも関係していると思われますが。

グリーン券を「みどりの窓口」で購入する際に、新たに「ドリンクサービス引換券」が発行されることになりました。
「リレーつばめ」「ソニック」「かもめ」(早朝・夜間の一部列車・区間を除く)では客室乗務員さんが乗務しますので、客室乗務員さんにこの引換券を渡してドリンクサービスを受けます。それ以外の列車では、事前に駅のキヨスクでドリンク(120円相当)との引き換えを行うことになります。

ということで、今回は「季節のジュース」として出されていたミックスジュースをいただきました。
ワイワイやっているうちに、列車はまもなく熊本、というところ。

このあたりでは、最近田植えが行われたようですね。この「リレーつばめ」が走る沿線では、冬場は麦、夏は稲作という「二毛作」をやっているところが多く、全体的に田植えの時期が遅い傾向にありますね。

列車は定刻より若干遅れて、熊本に到着しました。
さて、目的の列車を待ちましょう。

通常だと、熊本駅の頭端式・0番Aホーム発だった「あそBOY」ですが、同ホームが新幹線ホーム建設のからみで工事中ということもあってか、この日は1番ホーム発に変更されていました。
そして、その1番ホームに上熊本方から、「SLあそBOY」が入線してきました。

今回は正真正銘、SL・58654が先頭であります。ですが、すでに書いたように、同機はすでに単独での列車牽引はできない状態。ということで・・・。
・・・最後尾には、ディーゼル機関車・DE10-1756が連結されていました。
この日の「SLあそBOY」は、SLが先頭に立ちつつも、DLが列車を後押しする、プッシュプルの状態で運転されることになっていました。

さらに、DE10の前にいるブルーの車両。こちらは、ブルートレイン24系の電源車・カニ24-15。
SLのほうも重傷なんですが、実は「あそBOY」専用編成の50系ウエスタン風客車のほうも、サービス用電源の故障に見舞われていまして、ブルトレ用電源車のほうから給電を受ける状態になっていたんです。
文字通り、「SLあそBOY」としては満身創痍の状態ではありますが、それでも、DLと電源車の助けを借り、この日の運転を迎えたわけなのでした。

8月でのSL運転終了がアナウンスされた直後ということもあってか、熊本駅には多くの人が乗車や撮影に訪れていました。
左下写真、機関車のそばには、家族連れが続々詰め掛けて記念撮影・・・。

テレビ局のカメラも2社ほど見かけましたね・・・うち1社は、列車のほうに実際に乗り込んでいた模様です。
こちら、客車の車内。

もちろん、さきほどから書いているような状況のため、指定席は完売。
早めにおさえておいて正解でした・・・。
列車は汽笛一声、熊本を発車。

新水前寺を過ぎ、電車通りを跨いでいきますが・・・。
・・・その頃すでに車内では、こういう状態。

まだ午前中ですが、我々一行、始めちゃいました。(爆)
車内で購入したビールを開けます。

いやぁ〜、やっぱりこれがたまんないですよ。
明るいうちから呑めるというのは、幸せなことです。(笑)
しばらくしてから、車内をまわってみました。
もちろん、指定席完売ですから、ほぼ満席の状態でありました。

こちらは、SLのすぐ後ろになる1号車の展望デッキ。
文字通り、SLの息遣いが聞こえています。
そして、一方の後方・3号車のデッキ。

本来でしたら、こちらでは後方展望を楽しめるはずなんですが、先ほど書いたように、電源車のカニ24形が連結されている関係で、窓の外はこんな感じ。
とにかく、今回は営業列車として走ることが最優先ですから、やむをえないところですね。
そうこうしている間に、列車は肥後大津を過ぎ、非電化区間へと進んできました。

阿蘇の外輪山の入り口となる立野へ向け、高度を上げていきます。
SLのほうは、といいますと、傷ついた体に鞭を入れるかのごとく、黒煙を上げながら懸命に坂を登っています。

忘れちゃいけないのは、このあたりが最大33.3‰(パーミル)の急勾配区間である、ということ。
急勾配を登るSLというのは、見る側からすれば非常に魅力的なわけですが、逆に、こうした厳しい路線条件が、年老いた58654号機の車体を徐々に蝕んでいたともいえるわけで・・・実に複雑な心境でありました。

旅はまだ続きます。
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