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Part2(2002・1)
15時7分、「ゆふいんの森5号」は定刻に博多を発車しました。
この車両、運転室の背後からの前面展望も楽しむことができます。写真は博多を発車したばかりのところで、引上げ線で折り返し整備中の883系「ソニック」の編成も見えますね。

ちなみに、車内では客室乗務員さんが、日付入りのボードを持ってまわり、「カメラをお持ちの方、ご乗車の記念に記念撮影はいかがですか?」とお客さんに声をかけていました。さすがに観光特急としての位置付けがされている列車だなぁ、と思わせられるサービスですね。
・・・あまり写真を撮られるのが好きでない私でも、思わずデジカメを渡して「じゃ、お願いできますか?」なんて言ってみたりしている始末・・・。(爆)
で、私はしばらくしてから席を立って、乗車している1号車から3号車のほうへ向かいます。

この車両のデッキは写真のような感じになっています。この車両はハイデッカーですので、通路も通常よりは高くなっているわけなんですが、このキハ72形の場合は車両間の通路も車内客室にあわせて高い位置に設定されています。
たまたまここを通りかかった乗客の女の子たちが、「なんか釣り橋みたーい」といって驚いてましたが、なるほど、一般の人から見るとそんな感じに見えるのかもなぁ、とか妙に納得してしまいました。(笑)
3号車には、小さいながらもビュッフェが設えてありました。ハイデッカーで眺めもよく、しかも沿線の景色もいい、ということであれば、ここで飲み食いしながら外を眺めるのが一番いいかなぁと思いましてね。
この列車のビュッフェは、「つばめ」ほどいろいろなメニューがあるわけではないんですが、それでもこの列車の特色を生かしたものがいろいろとあるようですので、ちょっと試してみなきゃいかんなぁ、ということで・・・。
・・・まずは、湯布院の地ビールを注文することにしました。
車内で出される地ビールは日によって種類が違うということなのですが、この日出ていたものはけっこう女性にも人気のある味だということで、少し甘めの、けっこう飲みやすいものに仕上がっていました。ちなみに、小さ目のMサイズ(400円)と、大き目のLサイズ(500円)の2サイズから選べるようになっています。
横においてあるのは、チーズが入ったポークウインナー。これもまたなかなかの味でした。
二日市、鳥栖、久留米と停まり、列車は久大本線へと進んでいきます。
前回、この久留米から由布院までの久大線に乗ったのは、3年前、当時まだ走っていた客車列車に乗って、久留米から大分まで乗りとおしていますが、そのとき以来、ということになります。
ビールがなくなりましたので、私は客室乗務員さんに「お薦めのものはありますか?」とかいろいろ話を聞いたうえで、車内限定の「ゆふいんの森ワイン」を頼むことにしました。・・・そっか、ワインは「つばめ」だけじゃなかったんですよね(^^;)。ちなみに、製造元は久大線沿線の福岡県田主丸町のメーカーのようでした。
ブルーベリーと巨峰の2種類があったので、とりあえず両方飲み比べてみました。ブルーベリーのほうは、非常に口当たりがよくて女性に受けそうな味、巨峰のほうは少し酸味が効いている感じでした。
筑後川沿いを列車は内陸へ向かっていきます。川の名前は、県境を越えると三隈川に変わります。このあたりは、ちょうど夜明ダムのダム湖になっています。
日田彦山線との合流点である夜明を過ぎ、盆地地形の日田市街へ進んでいきます。
日田に到着しました。
ここで品物の積み込みがあったらしく、車内販売のほうはこの日田から先で営業を始めるとのことでした。
で、このビュッフェにはノートが置いてありまして、乗客が思い思いに乗車の感想を綴っていました。
私もコーヒーを飲みながらいろいろ読ませてもらったんですが。この車両がお客さんに好評なことを反映してか、「また乗ります」みたいな感想が非常に目に付きました。
列車は沿線の見所の一つ、慈恩の滝の前にさしかかります。列車の中から見える、ということで、列車もスピードを落とし、滝をゆっくり見せるというサービスをしていました。
列車はまもなく豊後森に着こうとしています。
右手車窓には、写真の伐株山(きりかぶさん)という山が見えてきました。山容が巨木の切り株に似ていることからこの名がついたようです。
客室乗務員さんの話では、ここはパラグライダーのメッカなんだそうで、この日も切り株のような山のまわりを、パラグライダーがいくつも飛んでいるのが、肉眼でも確認できました。
豊後森では、上りの「ゆふいんの森4号」と交換です。向こうの列車は、さきほどご紹介したキハ71形「ゆふいんの森1世」のほうで運転されていて、客室乗務員さんの車内放送でも、そのことが紹介されていました。

ここ豊後森、といえば、駅の近くに、SL全盛時代に使われ、全国的にも数を減らしてきているこの扇形機関庫が残っているということで、鉄道ファンの間では有名なところです。
最近、文化財的価値を持つこの扇形機関庫を残そうということで、地元では保存運動が始まっていると聞いていますが、私も、こうした産業文化財的な価値のある鉄道構造物は、ぜひ積極的に保存・修復をやっていくべきだと思いますね。
豊後森を出ると、列車は次の終点・由布院まで停まりません。
写真の場所は、九重高原への入り口の駅として知られる豊後中村の駅ですが、この列車は通過です。
列車は由布院盆地に下ってきました。右手にちらっと由布岳が見えてきました。
間もなく終点です。
列車は17時15分、由布院に到着しました。
客室乗務員さんが、笑顔で「いってらっしゃいませ」とお見送りをしてくれます。気持ちよく列車を降り、湯布院の観光に向かうことができる、ほんと、お客さんの一歩先を見据えたサービスぶりが窺えました。
駅舎を出ると、正面に見える由布岳が、夕日に赤く染まっているのが見えます。
写真で伝わるかどうか自信がありませんが、実際にこの目で見た感じでは、圧倒されそうなスケールで迫ってくる、そんな印象でした。
駅前の喫茶店で軽く食事を取り、駅舎内の美術館兼待合室でパソコンを開き、モバイル更新をしていました。それにしても、こういう形で出先からの更新ができる、というのは、本当に素晴らしいです。全国で私のHPを見ているみなさんと、旅の時間を共有できるわけですから、世の中進歩したもんですね。
さて、ここからは普通列車で大分へと抜けることにします。
18時16分発、大分行き4869D列車、写真の黄色いキハ125形で運転されます。さすがにこの時間だけあって、車内はそれほど混雑していません。
暗闇の中を、列車は走っていきます。
写真は南大分駅で列車交換待ちの停車中に撮ったもの。さすがにこの時間になると、車窓の景色を撮るというのは難しいですね。
4869Dは19時23分に大分駅に到着しました。
ここからは、また特急列車での移動になります。ここからの行程についてはいろいろ悩んだんですが、そうしたなかで私がとった行動とは・・・。
大分に着いた私は、そこから485系の列車に乗って移動することにしました。宮崎空港始発でやってくる「にちりん12号」小倉行きです。
大分から日豊線を北上するのには、特急「ソニック」がほぼ1時間に2本の割合で博多まで走っていますので、多くの人はそちらを利用するわけですが、私はあえて小倉止まりの485系の列車を選びました。
昨年春のダイヤ改正で、485系「にちりん」の博多乗り入れがなくなり、私自身もこの九州の485系になかなか乗れる機会がなかったので、こういう機会にでも乗っておかないと、という気持ちが強かったわけです。

やってきたのは、九州の485系独特の色使いが施された「RED EXPRESS」仕様の5両編成。もちろんグリーン席利用なので、1号車の後より半室に設けられているグリーン席へ向かうんですが・・・。
乗車した1号車・クロハ481-201の室内はこのようになっていました。
このクロハ481-200番台車は国鉄時代の1986年、九州内の特急短編成化の流れのなかでグリーン席を確保するため、クハ481-200番台車を普通・グリーン合造に改造したもの。あまり予算のないなかでの改造だったためか、どちらかといえば簡易的な改造の色合いが濃い感じがします。
たとえば、グリーン席と普通席の仕切り部分もご覧のとおりで、一般的なグリーン席のようにきっちり壁でふさいでグリーン席の静粛性を確保するという感じではありません。
ちなみに、この車両の仕切りガラスには、福岡県花であるウメと、熊本県花であるリンドウの花の絵が模様として描かれていましたので、当初この車両はおそらく鹿児島線の特急「有明」に使用されていたのでしょう。
そして、極めつけはこのシート。これ、実は0系新幹線のグリーン車で使用されていたものを転用しています。背もたれはもちろん、簡易リクライニングです。
0系のシートが入ってきているあたりが、国鉄時代の改造であることを色濃く感じさせます。JR化後ではまず、0系新幹線を所有しているJR他社からシートをもらってくるということはありえないですしね。
このタイプのシートにはテーブルがついていますが、そのテーブルは肘掛のところから引っ張り上げて出してくる写真のような形状のものになっています。お弁当を置いて食べるというような感じの大きさではなく、缶ジュースとおしぼりを置けるくらいの大きさ、といったところでしょうか。
さて、列車は暗闇の中、懸命の力走を続けています。時折響くタイフォン(汽笛)のピーッ、という音が、非常にもの悲しげに聞こえます。
写真は行橋到着時のもの。3分ほど遅れていました。

この485系は、国鉄時代から全国の電化線区で活躍してきた汎用特急車ですので、私自身もこれまで全国を旅してきた中で、幾度となく乗っている車両です。すでにかなりの車齢がきている車両たちですが、なんというか、乗っているとどっしりと落ち着いた気分にさせてくれる、そんな雰囲気を今でも持っているような気がしました。
「にちりん12号」はやはり3分ほど遅れて、終点の小倉に到着しました。
車両はこのまま、門司港へと回送されて一眠り。明日の朝、再び宮崎へ下っていきます。
ここからは、「にちりん」では手の届かない博多へ向かうことにします。次の列車は「ソニック52号」博多行きなんですが、写真の電光表示での案内(特急の場合は一定間隔で列車名・時刻・行先の表示と、編成両数の案内の表示が交互に出ます)によれば、列車は6両編成でやってくるとのこと。・・・待てよ、通常「ソニック」で使用される編成には5両編成と7両編成しかないはず、そこへ6両編成ということは・・・。
・・・その答えがこれでした。この日、「ソニック52号」は通常の885系「白いソニック」の5両編成ではなく、同じ885系でも通常は「かもめ」に運用されている6両編成の車両(南福岡電車区SM5編成)が使用されていました。3連休中ということもあり、乗客増対策としての事実上の「増結」のようですね。
列車に乗り込みました。車掌さんの放送では、きょうの編成変更の影響で、自動放送と車端部LED表示器での停車駅案内が行えないということを知らせていました。「かもめ」用の編成ではおそらく、「ソニック」用の自動放送や案内表示のプログラムを積んでいないんでしょうね。車体側面の行先表示は、乗務員室の設定器でなんとかできるんでしょうが・・・。

車内ではパソコンを車端部のコンセントにつなぎ、HP更新とともに充電をおこなっておりました。(^^;)
ということで、列車は博多駅に到着です。
到着した列車、行先表示器が「特急ソニック 大分」となっていました。明日の朝、また「ソニック」の運用に入る、ということなのかな・・・?
博多駅では、いったん改札を出てきました。
福岡に遊びにきたと思われる若い人たちが、この時間も結構いるのが目立ちますね。平日に比べれば人の数は少ないと思いますが・・・。
しばらく休息をとった後、再びホームへ。
次の列車は、22時50分発の特急「ドリームにちりん」宮崎空港行き。そう、夜行列車なのでした。
この列車は、783系「ハイパーサルーン」での運転となります。当然寝台車などはなし。座席夜行の列車といえば、私の場合は、1年前に急行「アルプス」のグリーン席を使って以来、2度目ということになります。
もっと若い時分から鉄道での旅に目覚めていたら、その数はもっと多くなっていたでしょうが、私の場合はけっこう「遅咲き」なもんですから(笑)、これがまだ2回目なんですよね。
ということで、「ドリームにちりん」の783系5両編成が入線してきました。見ていると、1号車A室のグリーン席のほうにもけっこう若い人たちが乗り込んできていますね。宿泊代が浮き、しかも寝ながら移動ができるということで、夜行特急は鹿児島線の「ドリームつばめ」も含めて重宝されているようですね。そして、私のような「グリーン豪遊券」使用の人にとっても、非常に便利であることは疑いないところです。
車内には、このように毛布が準備されていますので、背もたれを倒し、毛布をかぶって早々と休む態勢に入ります。毛布は「つばめ」のグリーン車に積んであるものと同じもののようですね。
列車は定刻に博多を発車。途中、小倉からは日豊線へ入って進行方向が変わるため、座席の向きなんかはどうするのかな、と思っていたら、さすがにみなさん、この時間でもイスは回しているようですね。ウトウトしかけていた私もいったん起きだして、座席を回しました。

23時50分、小倉を発車。私は、行橋到着を確認しないまま、再び眠りの世界に入りました・・・。
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