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Part2(2003・2)
2月8日の朝です。
あまり眠れなかった割には、すっきりとベッドから起き上がりました。

眼下の西鹿児島駅ホームからは、列車の発着を知らせる駅員さんの案内放送が聞こえてきます。
朝食をとってから少し部屋で横になり、10時20分頃、ホテルを出て、西鹿児島駅のホームへ降りてきました。

4番ホームには、博多へ向かう「つばめ10号」の787系Bk-1編成7連、5番線には、日豊線経由で宮崎へ向かう「きりしま6号」の485系Dk-1編成3連が停まっています。
さらに、6番線には新大阪からやってきたブルトレ「なは」が到着です。
この時間から、なかなか賑やかですね。
車内は、週末ということもあってか、けっこう人が乗っていました。
そして、私たちの目当てはこちら。
10時35分発、日豊線都城行きの普通6944M列車には、こちらの復活国鉄色・475系Gk-5編成が充当されていました。
この編成、この1月に鹿児島総合車両所で全般検査を施工されました。2000年秋にGk-5編成がこのカラーリングになった際、このカラーリングは次の検査入場まで、という話でしたので、この全検で白地に紺帯の九州ローカル色に戻されてしまうのではないか、という危惧もありましたが、結局この国鉄色で出場。もちろん再塗装されていて、美しい状態が戻りました。
この6944Mに、次の鹿児島まで乗ってみよう、ということにし、我々は車内へ入りました。
車端部がロングシートになるなど近郊化改造を施されてはいますが、かつては急行列車標準だったボックスシートも健在で、往年の電車急行の雰囲気を残しています。
そして、頭上の荷物棚は、文字通りの「網棚」。車端部だけは金網になってますが、もとからの紐網も健在なのです。
一駅間だけでしたがタイムスリップしたかのような時間を楽しみ、我々は鹿児島駅に降り立ちました。
この駅には、以前から役目を終えたと思われる車両が疎開留置されているケースが多いんですが・・・。
そのなかには、こちらのキハ28-2434の姿もありました。さきほどのGk-5編成などとともに、2000年に国鉄色に塗り替えられ、注目を浴びた車両です。
すでに運用を離脱してから時間が経っています。いつまでもここにいる、ということはないだろうと思われますし・・・。
振り返ると、そこには475系Gk-11編成3連の姿。
写真のクハ455-9、乗務員室の窓が板でふさがれていて非常に痛々しいです。この編成はジャンパ栓類なども外されており、おそらく復活はないでしょうね。
この鹿児島駅は、門司港から博多、熊本を通って下ってくる鹿児島本線と、小倉(西小倉)から大分、宮崎を通って下ってくる日豊本線という、九州を代表する二大幹線の終点、でもあります。つまり、この駅から発車する列車は、どちら向きであっても上り列車、ということなのです。

こちらの「462」と書かれたキロポストは、日豊線小倉起点のキロ程。
一方、こちらの「400」と書かれたキロポストは、鹿児島線門司港起点のキロ程を記しています。二つのキロポストの間には、100mの距離もありません。
鹿児島駅前に出てきました。
私自身は、ここで下車するのは初めてでした。

そして、駅の前には・・・。
・・・こちら。鹿児島市電の鹿児島駅前電停があります。
3台の電車が並んで停まれるスペースがあります。

で、ちょうどいい具合に、最近投入された超低床電車・1000形「ユートラム」が停まっていますので、これに乗ってみることにしました。
車内はこちら。
この1000形、前後の運転台部分のみが床面が高くなっていますが、これは台車を両先頭部分に配置していることが要因です。

ほどなく電車は発車しましたが、熊本市電の超低床車・9700形といい、この電車といい、最近の路面電車は、本当に加速が滑らかで、かつ鋭い。釣りかけモーターの電車とは、やはり隔世の感、というところでしょう。
天文館通で電車を降りた我々、しばらくアーケード街のゲームセンターで時間をつぶし、この場所へ。・・・そう、薩摩黒豚料理「黒福多」鹿児島本店です。
昼飯をラーメンにしようか、黒豚にしようか考えた挙句の結論が、これだったわけで・・・。
私は、こちらの黒豚ロースカツ膳を食べることに。
やっぱり黒豚のロースカツは脂身もサクサク食べれてしまいますね。そして、ここのオリジナルトンカツソースも、なかなか面白い風味でいいですよ。
お腹を満たした後、再び市電に乗ります。
・・・と、やってきたのは、またしても超低床車1000形。けっこう当たるもんですねぇ。
ということで、雨の降る中を西鹿児島駅へ戻ってきました。
駅舎の上には新幹線ホームの構造物が徐々に姿を現してきました。
駅舎の中も、新幹線関連の工事が進んできているようです。

そろそろ、戻りの時間になります。
戻りの列車は、西鹿児島13時25分発、「つばめ16号」博多行き。
787系Bk-5編成7連が、鹿児島総合車両所から回送されてきました。
客室乗務員さんが、入線する列車に一礼するいつもの光景・・・。
もちろん、4号車は、ビュッフェ車から改造された座席車・サハ787-209に組み替えられているわけですが・・・。
今回は、この車両に乗り込むことにしました。

私の場合は、通勤などでこの席に座ることもあるわけなんですが、今回はまぁいつもと違う区間での乗車ですし、客室乗務員さんも乗ってますから・・・。
列車は西鹿児島を定刻に発車しましたが、とにかく雨が降っている上に風が強く、しばらく窓に雨が激しくたたきつける状況が続きました。
なにしろ、この日南九州地方では、昨年より1ヶ月も早く「春一番」が観測されたとのことで・・・確かに、気温も高く、冬場と同じ服装でいると少し動いただけで汗ばむような感じでしたのでね。
4号車には、ビュッフェがなくなったかわりとして、ミニショップを兼ねたこちらのインフォメーションコーナーが設けられました。
せっかく、席から近いところにあるので、じゃ、まずは、ということで・・・。
頼んだのは、こちらのコーヒー。通常出されている「つばめ」オリジナルのブレンドコーヒーです。
私たちは今回、旅行センターで申し込んだ「駅長おすすめのホテル」という旅行プランを利用していまして、そのおまけで、車内でのコーヒーを1杯100円で飲めるクーポン券をもらっていましたので、通常300円のコーヒーを1/3の値段でいただいたわけで・・・。
川内を出て、列車は西方付近の東シナ海沿いの区間へ。
雨は相変わらず激しく降っていました。波も高いようです。
お腹がいっぱいで、ともすれば眠くなりがちな午後のひととき、やっぱりもう一杯・・・と思い、今度はいま開催中の「コーヒーフェア」のアイテム、ブラジルサントスコーヒー(350円)を飲むことにしました。
さきほどのブレンドコーヒーとは、明らかに香りが違います。口に含むと、独特の香ばしさが・・・。目が覚めますね、ほんと。
列車は、鹿児島県内最後の停車駅・出水に着きました。
駅舎には、こちらの表示が。この冬も、出水平野では1万羽を超えるツルたちが越冬しているようです。
熊本県内に入ってきました。
水俣を出て、写真の場所は、新水俣駅の建設現場。新幹線は現在の水俣駅には乗り入れず、ここで鹿児島線から転換される第三セクター「肥薩おれんじ鉄道」との接続を取ることになります。
水俣を出たところで、こんどはこちらが登場。そう、水俣の福田農場で作っている甘夏サングリア・「つばめワイン」です。
赤と白、一本ずつ買い込みました。さっそくカンパーイ!
気がつくと、列車は八代海沿いの区間を走っていました。

こんどはバニラアイスクリームを注文して食べていました。
もう、乗車時間の半分くらいが過ぎ去っていました。
八代を出て、新八代駅の工事現場付近。
鹿児島線から、新幹線ホームへと上がっていくアプローチ線の工事も着々と進行し、すでに部分的に架線が張られていました。新幹線が開通すると、新幹線接続列車となる「つばめ」はここを走って新幹線の向かい側ホームに入っていくわけで・・・。
まったり話し込んでいるうちに、列車は熊本駅へ。

アイスクリームを食べた後、さらにブラジルサントスコーヒーをもう1杯飲みました。
この時間になると、がぜん目がさえてきました。
しばらくすると、インフォメーションコーナー担当の客室乗務員さんが、こちらのものを持ってきてくれました。袋の中には、飴がたくさん。・・・まぁ、けっこう我々いろいろ飲み食いしましたのでねぇ・・・。

考えてみると、ビュッフェがなくなって温かい食べ物こそ食べられなくなったものの、沿線のおいしい駅弁も含め車内でこうやっていろいろ飲食物がいただけて、のんびりくつろげるアメニティがあって、車窓の景色もさまざま楽しめて・・・しかも、客室乗務員さんたちのしっかりしたサービスがあって・・・。これだけの要素がそろっている列車は、日本中見渡してもそんなにあるわけじゃありません。
そういう意味では、ビュッフェがなくなっても、「つばめ」は「つばめ」。ビュッフェが「つばめ」の魅力の大きな部分を占めていたことは事実としても、この列車はそれにとどまらないものを持っています。

「いちばん楽しい列車になりたい。」・・・覚えていますか? いまから11年前の7月、787系「つばめ」がデビューしたときのキャッチコピーです。
ビュッフェがなくなったいまでも、その言葉に恥じないものを、この「つばめ」という列車は、持っているんです。
気がつくと、窓の外の雨はやんで、時折日の光が差し込むようになりました。
久留米を出て筑後川を渡り、鳥栖に停まって・・・。
ただ、久留米の手前と、鳥栖の手前で、どうやら先行列車がつかえていたようで、信号停車。そこから若干遅れが出ていました。
やがて、車内のLED表示器に、「次は終点 博多」の文字が表示されました。
もうすぐですね・・・。

下車準備をしてデッキへ向かうと、インフォメーションコーナーを担当していた客室乗務員さんが、「どうもありがとうございました。またお待ちしております。この先もお気をつけて」と明るく挨拶してくれました。
このあいさつが、「きっとまた、この列車に乗ろう」という、次の旅への意欲をそそるものであることは、間違いないでしょう。
17時21分、「つばめ16号」は6分遅れで博多駅1番ホームに到着しました。

私はここから「ソニック43号」に乗り継ぎ、帰宅の途につきます。
「つばめ」の転機は、今回のリニューアルに伴うビュッフェ営業の廃止、だけではありません。
来年春にも予定される九州新幹線部分開業による運転区間の短縮、というのも、大きな転機です。走行時間が、現在の半分以下になってしまうわけですから。

明媚な区間の多い八代以南の車窓風景を、「つばめ」車内から楽しめる時間は、もうあまり残されていません。
みなさんにもぜひ、いまのうちに、「つばめ」で旅しておいてくださいと、言っておきたい。そして、私もいずれまた来たい・・・。
これがいまの心境です。

ほんと、今回は充実した往復行でした。
<おわり>