(2000・8) | ||
2000年8月1日、JR磐越西線で、SL列車同士の交換という、おそらく今世紀最後となるであろうスペシャルイベントが実現しました。 ワタシがこのことを知ったのは5月末のこと。日頃から懇意にしていただいていた某ネット仲間さんとともに、秘密裏に出撃準備を進めてきました。仕事も早くから休みの希望を入れておき、指定券も無事確保できたということで、私はページに、以下の予告編をアップしました。
そして、いよいよ、その日がめぐってきました。否が応にも、胸が高鳴ります。 |
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朝4時に起床したワタシ、八王子から快速電車に乗って、東京駅へやってきました。とにかく、まずは新潟へ向かいます。 ここは上越・長野新幹線がおもに発着する新幹線20番ホーム。停まっている列車は、6時40分発、「あさひ303号」新潟行き。車両は、新潟新幹線第一運転所所属の200系K48編成。・・・っと、この編成、クリームにグリーンの帯、という200系オリジナルの塗装ではありませんね。実はこの車両、車両の内外にわたる大幅なリニューアル工事を昨年施行されたばかりの車両で、車体カラーもE2系など、最近のJR東日本の新型新幹線車両と塗りわけパターンが似通ったご覧のような感じに変更されています。 実は、このタイプのリニューアル編成に乗るのは初めてなんで、最初から「面白いのに当たったなぁ」なんて思ってたんですが・・・。 |
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ホーム上でネット仲間さんと難なく合流し、あいさつもそこそこに車内へ入ります。 こちらが、リニューアルされた200系普通車の車内です。シートの基本構造は、E2系などで採用されているものと近いようですが、モケットカラーはまったく新規のものが採用されているようです。車内を見ていると、E2系と485系3000番台車、という、最近のJR東日本の新幹線・特急車両の車内アコモとかなり共通性があるように感じました。 さて、今回の行きがけにこの「あさひ303号」という列車を選択したのには、理由がありました。というのは、早朝の下り列車(往路は「あさひ301号」「あさひ303号」限定)を使って往復利用する際に有効な「あさひ朝トクきっぷ」という企画きっぷがありまして、これの「指定席用」を使うと、確実に席に座れる上、わずか11000円で新潟まで往復できてしまうんですよね。実はこれ、通常料金の46%引きという、すさまじいきっぷなんです(^^;)。朝、多少早起きしてでも使ってしまいますよね、これ。 |
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「あさひ303号」は定刻どおり東京駅を発車し、やがて埼玉県との境を流れる荒川を渡っていきます。この日は朝からご覧のような晴天で、本当に車窓から見ていて気持ちがいい感じでした。・・・それにしても、東京脱出。北へ向かう新幹線に乗るとき、この荒川を渡ると、晴れ晴れした気持ちになるのは、なぜでしょう?(笑) ネット仲間さんとしゃべったり、コーヒーを飲んだりしているうちに、列車は上越国境の大清水トンネルを抜け、越後湯沢へ。ここから先は、青々とした田園の景色を眺めながら、新潟へ向けて突っ走ります。 |
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「あさひ303号」は定刻の8時53分、新潟駅に到着しました。 実は、この時点で、最初に乗るSL列車である「SLばんえつ物語号」の新津発車時刻まで3時間もあるということで、喫茶店に入ったり、駅構内に出入りする車両群を眺めたりしながら、新潟駅近辺で時間をつぶすことになるわけですが・・・。 乗り継ぎ列車の時刻を調べに入った「みどりの窓口」で、写真のようなものを見つけました。これは、今回のイベントにあわせて売り出されたオレンジカードのセット(2000円)。気がついたときには、買っていました。(笑) |
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なんとかいろいろ策を労して時間つぶしを終えたワタシたちは、いよいよSLの始発駅である新津へ向かうことにします。11時7分新潟発、磐越西線経由の会津若松行き快速列車に乗るわけですが、非電化区間の磐越西線へ乗り入れる列車のため、キハ110形ディーゼルカー2連での運転です。 すでにホームは、SL列車に乗る、あるいはSLを撮る目的でやってきた人たちでかなりにぎわっていました。それらの人たちがみなこの2両編成の列車に乗ったもんですから、列車はすぐに満員状態になってしまいました。 それでもこのキハ110は、かなりの力持ちですから、いったん走り始めると、幹線の信越線の線路上を快走していきます。 18分後、列車は新津に到着。そこには、すでに目的の列車が待っていました。 |
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新津に到着したワタシたちを待っていたのは、こちら。昨年春から運行を始め、すでに磐越西線の目玉列車として定着した感のある、C57-180牽引の「SLばんえつ物語号」会津若松行きです。 ワタシは、昨年の「99秋ひとり旅・飯山、只見、磐西」の旅の際に、会津若松発新津行きの「SLばんえつ物語号」に乗っているんですが、あのときは、新津到着前の夜汽車の風情が非常に印象的だったですね〜。 そして今回、かつての「同僚」であるD51-498と、本線上での「ご対面」を果たすわけですが、さて、どんなことになるんでしょうかね? |
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ちなみに、この日の「SLばんえつ物語号」のダイヤは、いつもの「ばんえつ物語号」と異なり、通常なら新津10時発のところが、この日に限り11時53分発と、津川での列車交換を念頭に置いたものに変更されていました。 ところが、運転席横の「新津」の区名札の横に差し込まれている仕業札を見ると、「臨A57(仕業番号) ニツ(新津)−8226レ−ワカ(会津若松)」と書いてありますね・・・あら、これは通常ダイヤの時の仕業札ですね〜(ちなみに、この日の「ばんえつ物語号」の列車番号は9228レ)。さすがに仕業札まで差し替えるゆとりはなかったのかな? すでにホーム上では、機関車の周辺を中心に、家族連れをはじめ多くのお客さんで混雑していました。また、売店なども臨時に出ていて、そちらのほうにもお客さんが集まっていました。 |
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さて、それでは列車内に乗り込んでみましょう。 この「ばんえつ物語号」専用の12系客車ですが、昨年の「ばんえつ物語号」運転終了後に酒田リニューアルセンターで改造工事が施工されました。昨年との変更点ですが、室内ではまず天井の客室照明が、一般的な蛍光灯の照明から円形のカバーのついた暖色系の照明に変わっていること(写真ではフラッシュ使用のため色合いが分かりづらいかもしれませんが)、そして、通路側座席に、肘掛け下に収納可能なテーブルが設置されたこと、というのが主なところです。 |
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また、車外から判別できるところでは、「お、こんな位置にあったか?」というこのマークの出現です。昨年はこの位置に窓があったんですけどね・・・。 この「ばんえつ物語号」の客車編成ですが、来年からはまた別の車両を改造して投入するという話も出ており、その動向が注目されますね。 |
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「SLばんえつ物語号」は11時53分、新津を発車。真夏の日差しの中をゆっくりと走り始めました。「いらっしゃいませ。森と水とロマンの鉄道、2000年『SLばんえつ物語号』にご乗車くださいましてありがとうございます」という車掌さんのアナウンスが聞こえてきます。 市街地を抜けると、さっそくご覧のような田園風景が見えてきます。単線非電化の線路の上を、のんびりと走っていくSL列車、本当に、贅沢な時間ですねぇ。 沿線には、やはりというか、カメラを持った人が所々に立っています。なかには、通常の時刻と違うせいか「なんでこんな時間に走ってるの?」という表情で列車を見送っている人もいたりとか・・・。(^^;) やがて、案内役を兼ねた車掌さんが車内へまわってきました。車掌さんはお客さんの持っているカメラを手にとっては、自分の帽子をお客さんに貸したりして、記念撮影のお手伝いをしています。ワタシたちも、ちゃっかり車掌さんの帽子をお借りして、パチリ。(笑) それにしても、気になったのは、車内にけっこう空席が目立つことですかねぇ。8月1日運転の「ばんえつ物語号」というのは当初設定されておらず、D51-498の運転決定にあわせて急遽決まったものではありましたが、夏休み期間中でもありますし、もっとたくさんの人が乗っているのかと思っていましたが・・・。 |
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さて、車内では、「SLばんえつ物語号」の乗車記念としてもれなく配られる「乗車手帳」と、この日だけの限定でつくられた「貴婦人とデゴイチ 再会の夏」と題した乗車記念券が配布されました。 実は、このあと、車内で「ばんえつ物語号」のビデオテーププレゼントのくじ引きもあったんですが、ネット仲間さんもワタシも、外れました。(笑) |
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列車は五十島で対向列車との行き違いを終え、山へ向かって登っていきます。さすがに発車時には、煙がもうもうと立ち上っておりますが・・・不完全燃焼の黒い煙、ということは、撮影者向けに重油を焚いているのかな? そうなんです。撮影者の多いと思われるところでは、こうやって重油を焚いて、わざと黒い煙を出すんですよね。黒い煙のほうがファンが喜ぶから、ということらしいんですが・・・。 実はこのSL、C57-180ですが、この日の数日前の運転ではトラブル発生でディーゼル機関車の補機つきでの運転になったということで、一時はこの日の運転がどうなるのかと非常に心配だったんですが、この様子を見る限り、問題なさそうですね。安心しました。 |
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列車は阿賀野川を渡り、三川へ。次は、いよいよメインイベントが待ち構えている、津川です。 車内では車掌さんが、D51-498牽引の「SLえちご阿賀野号」と行き違いをすることを放送で案内、入線時には拍手で迎えましょうと呼びかけていました。 津川到着は13時16分。列車を降りるべくデッキにたったワタシたちが見たものは・・・駅周辺、そしてホーム上に鈴なりになった人々の姿でした。 |
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津川に着いた「SLばんえつ物語号」から降りたワタシたち。一目散に、ホームの会津若松よりに向かいました。 すでに出来ていた三脚の林のなかから隙間を見つけ、カメラを構えます。そのままの姿勢で、会津若松からやってくるデゴイチを待ちました。 13時33分、D51-498が牽引する「SLえちご阿賀野号」が、線路の向こう側に姿を現しました。周囲でいっせいにシャッター音が響きます。ワタシも、隙間から差し出したカメラのシャッターを切ります。ワタシの構えた位置からはこのカットを撮るのが精一杯でしたが・・・。 デゴイチの到着を待ちかねたかのように、C57-180が汽笛を響かせます。入線してくるD51-498も、負けじとばかりに汽笛を鳴らします。・・・両方の機関車の汽笛の音が重なり合い、まさしくその場の空気を支配しました。ほんと、鳥肌がたつような雰囲気でした。 やがてホームでは、デゴイチを迎える拍手の音がなり始めました。 |
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さて、こちらが「SLえちご阿賀野号」を牽引してきたD51-498です。スマートさゆえに「貴婦人」と呼ばれるC57とは対照的に、こちらD51はさすがに元・貨物用の重量感あふれるスタイル。やはり、同じSLでもまったく違う雰囲気を漂わせています。 ここ津川には、給水を行うための設備がありまして、C57に続き、このD51も給水作業をおこないます。同時に、足回りの入念なチェックも・・・。黄色いヘルメットをかぶった作業員がいるのが、写真でもお分かりだと思います。 |
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この間にホーム上は、両方の機関士さんに花束の贈呈が行われたり、ここ津川に言い伝えが残る「狐の嫁入り」にちなんで、婚礼衣裳に身を包んだ狐に扮した地元の人たちが出てきていたりと、かなりにぎやかな状況が続いていました。 13時43分、「SLばんえつ物語号」が一足先に会津若松へ向けて出発していきました。ワタシたちは、残った「SLえちご阿賀野号」のほうへ乗り込みます。 13時57分、「SLえちご阿賀野号」は、定刻に津川を後に、新津へ向けて発車したのでありました。(^^;) |
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さて、「えちご阿賀野号」はゆっくりとしたスピードで、阿賀野川沿いを走っていきます。 並行する道路では、多くの車からこちらのほうへ視線が注がれています。・・・なんだか、向こうのほうが列車に合わせてスピードを落としてたりして、そしていつのまにか車の列が後ろへとのびている・・・。(笑) |
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さて、途中の咲花で、またまたアトラクションが待ち受けておりました。・・・いきなり、地元の女性たちがホームから窓を開けるように促しているなぁ、と思っていると、開いた窓からなにやら物を手渡ししているようです。 で、その品物がこれ。・・・ここ咲花は温泉の街、ということで、乗客にプレゼントされたのは「温泉の素」だったのです。 一度、今度はのんびりここの温泉にも泊まりに来たいもんですね。 |
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さて、新津の一つ手前の停車駅、五泉に到着です。 ここからは昨年まで、蒲原鉄道というローカル私鉄が発着していました。昨年、ワタシが「ばんえつ物語号」に乗ってここにきたときには、まだホームが残っていたわけなんですが・・・今回、驚かされたのは、ホームどころか、線路も跡形なくすべて取り払われていたことでした。 ローカル私鉄といえば、前の週に苦しいなかでもさまざまな経営努力を重ねている銚子電鉄を訪ねているだけに、なんともやりきれない気持ちになってきますね、これは・・・。 |
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のんびりと走ってきた「SLえちご阿賀野号」は、定刻の15時14分、終点の新津に到着しました。ワタシたちにしてみれば、昼前に出発したところへ、3時間と少しかけて舞い戻ってきた格好になります。 到着してから改めて先頭のデゴイチに目をやります。・・・黒く鈍い輝きを放つ鉄の塊が、なぜにこれほど人をひきつけるのか、その答えは、SLの牽く列車を自分の目で見、そして実際に乗ってみなければ分からないものだ・・・SL牽引の列車に初めて乗ったその日からずっと思っていたそのことを、再確認したような感じがしました。 |
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さて、新津から新潟駅へ戻ったワタシたちは、そのまま新幹線ホームへ。16時27分発、「Maxあさひ326号」に乗って、東京をめざします。車両は「初代Max」ことE1系12両編成。ワタシにとっては、実に久々の乗車になります。 途中、疲れからウトウトしているうちに、この列車は2時間で、東京へと運んでくれます。・・・ずいぶんとまぁ、便利になったものだと思います。 |
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「SL列車 夢の競演」となったこの日のイベント。ワタシは、2ヶ月という計画期間を経てこの日を迎えたわけですが、短い時間ではありつつも、非常に心理的なインパクトの強いものとなりました。 ただ単に、同じ線路の上を、同じ日に2両のSLがそれぞれ列車を牽引して走り、途中で行き違いを演ずる、そのことにとどまらず、かつてSL全盛時代にこの磐越西線という同じ仕事場で活躍し、その後一度は眠りについたにもかかわらず復活を遂げ、かつての仕事場で再会を果たす・・・人間の織り成す人生ドラマと同じくらい人間くさい、そんなSLの出会いをこの目で見られたことには、非常に満足しています。 こうした運転、今後の予定はないという話も聞こえてきますが、そんなことを言わずに、またチャンスがあったらやってもらいたいなぁ、そんな気がします。鉄道の進歩の「生き証人」であるこれらのSLの生の姿を、多くの人たちに見てもらうためにも・・・。 みなさんも、機会があったら、ぜひSL列車の旅を楽しんでください。普段乗っている列車とはまったく違う感動が、きっと味わえるはずですから。 |
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<おわり> |