Part1(2011・7)
夏の旅をいろいろ検討するなかで、「青春18きっぷ」を1セット購入。
その1回目を、九州唯一の現役SLに会うために使うことにしました。
福岡からなら、十分に「18きっぷ」のみで日帰り可能。優等列車を一切使わずに行程を組みました。

なお、JR九州の公式サイトで案内されている、熊本〜人吉間SL列車の正式な列車名は、「号」の字を使わない「SL人吉」となっていますが、今回はワタシなりの捉え方で、あえて「号」の字をつけて紹介します。
7月22日朝、博多駅。
ここから、熊本まで直通する普通列車があります。
6時30分発、2325M列車。南福岡車両区の415系電車が充当されますが、この日は1500番台FM1513編成4連が充当されました。
そこそこ席が埋まった状態で、博多を発車。
すでに、学校は夏休みに入っていますが、部活や補習などで学校に行く高校生がけっこう乗っています。そして、その人数はどんどん増えていく・・・。
鳥栖で多少減りましたが、それでも大牟田まではずっと立客がいる状態でした。

電車のなかで気がついたもの。
左上写真ですが、この夏の節電対策として、JR九州では一部の車両で車内の蛍光灯を減らして運転しています。この電車でも、1両につき数本の蛍光灯が抜かれた状態でした。

左下写真、このFM1513編成は、戸閉回路の改良が施され、いわゆる選択開閉(ドアカット)ができるようになっていました。モハ414-1513車内で、この機能のためのリレーボックスを見かけました。
JR九州でいえば、JR化後に製造された811系以降の近郊型電車では当初からこの機能がついていましたが、国鉄型の415系にはそれがなく、冬季でも停車駅ではドアが開きっぱなしの状態でした。今後は冬場などに、停車時間の長い駅ではこの機能を使うことになるんでしょう。
大牟田である程度お客さんは減ったものの、それでもまだ座席はほぼ埋まったままの状態で熊本県へ突入。

写真は肥後伊倉駅。味のある木造駅舎がまだ健在でした。
九州新幹線全線開業で「リレーつばめ」が廃止となり、「有明」も早朝・深夜のみのわずかな本数になってしまったことで、逆に普通列車は特急退避がなくなり、所要時間の短縮につながっています。

気がつけば、列車は熊本市街へ。
9時9分、熊本駅2番ホームに到着しました。
到着した415系は回送となり、熊本車両センターへ引き上げていきます。
熊本に着いた頃、この日の目的の列車「SL人吉号」は、すでに5番ホームに入線していました。
一昨年、見事に復活を遂げたSL・8620形58654号機。再び元気な姿を見られるようになったことは本当に喜ばしい限りです。

ワタシにとって、煙を上げる58654号機に会うのは、6年前の2005年8月28日、「SLあそBOY」の最終運転を熊本まで見に来て以来、ということになります。
そして、肥薩線を走るSL列車に乗るのも、いったん58654号機が引退する直前、6年前の8月21日に、「SL人吉号」の熊本行き最終列車に乗車して以来、ということになりました。
SLの大改修とともに、牽引する50系客車3両のほうも再整備を施され、以前のウエスタンスタイルとはまた違った装いになっていました。

外観も黒がベースとなり、車内も落ち着いた雰囲気に生まれ変わりました。
こちらは、下り列車最後尾となる3号車の展望ラウンジ。
こちらもシックな感じの落ち着いた空間になりました。
3号車には、「SL文庫」が設置されています。
子供向けの絵本や、鉄道書籍、小説など、いろいろなジャンルの本が置かれています。こういう空間は、「指宿のたまて箱」など、JR九州デザイン顧問である水戸岡鋭治氏がコンセプトを担当した他の観光列車にも見られます。
2号車にあるビュッフェ。軽食や飲み物、トレイングッズなどを販売しています。
こういう供食エリアがあるというのも、やはり列車旅の魅力を高める大きなポイントですね。
1号車にも、展望ラウンジ。
下り列車では機関車の直後になります。
3号車の展望ラウンジとは内装が異なり、同じ列車内でも若干違った雰囲気を醸し出しています。

ここからは、58654号機の炭水車後部に取り付けられた、左下写真のプレートを見ることができます。
58654号機は大正11年といいますから、1922年の製造。いまもJR九州の新造車両の多くを手掛けている日立製作所笠戸工場(現・笠戸事業所)で落成しています。来年90歳になろうとしているわけで、大規模な改修を施されているとはいえ、この車両がいまでも走れているということには敬服するしかありません。
発車前には、隣の4番ホームに、南福岡車両区所属の415系国鉄色・FM5編成が登場し、つかの間のSLとの共演を見ることもできました。
発車直前、ビュッフェで写真のものを買い求めてきました。朝早いもんでもうお腹ペコペコでやんす。(笑)

この「SL人吉号」の車内で売られている、「人吉名物 おごっつぉ弁当」(500円)。熊本駅で鶏めしなどを売っている「仁志甲」が手掛けています。
内容はいたってシンプルで、白飯(梅干し入り)と赤飯のおにぎりに、鯖の立田揚げ、人参・タケノコ・ごぼう・シイタケ・こんにゃくの煮しめ、玉子焼き、たくあん漬が入っていました。野菜や米、シイタケなどは人吉・球磨産のものにこだわって作られています。
で、ビールは、熊本の地ビール「小町麦酒」の菊(ペールエール)。まだ朝だけど、許してちょ。(笑)
さて、列車は定刻に熊本を発車。
八代までは鹿児島本線を走って行きます。

車掌さんの車内改札を終えると、写真の記念乗車証を渡されました。
裏側にはスタンプ欄があり、ビュッフェに置かれている記念スタンプを押すことができます。
新幹線との接続がある新八代で若干乗客の入れ替わり。熊本〜新八代間だけこの列車に乗るという人も、案外いるものなんですよね。

続いて八代に停車。ここでは約7分の停車。
第三セクター・肥薩おれんじ鉄道の駅係員さんもホームで手を振るなか、列車は肥薩線へと足を進めます。
列車は肥薩線に入ってきました。
坂本に停車した後、球磨川第一橋梁を渡ります。そのあとは、進行方向左手に球磨川を眺めながら、一路人吉を目指します。
日本三大急流の一つに数えられる球磨川、時折、流れの速いところも見られます。
白石に到着しました。
列車はここで、5分の停車。

1908年(明治41年)に開業したこの白石駅、駅舎は当時のものがそのまま使われています。それこそ、58654号機よりも年上、すでに103歳になる駅舎は、すでに名所となっている嘉例川駅や大隅横川駅と同様、当時の風格を保っています。
白石に続いては、一勝地に停車。
ここでは10分の停車時間があります。
ここの駅も、開業は白石駅と同じ1908年。

一勝地駅では、ホームで物産販売が行われていました。
球磨焼酎の試飲もやってたんで、ちょっといただいてみました。・・・やっぱり、米焼酎は独特のスッキリとした味わいがいいですねぇ。
ってことで、2合入りのボトルを1本買い込んで、自宅へ持ち帰りました。ゆっくり呑ませてもらうとするかな。
球磨川第二橋梁を渡り、列車は球磨川下りの発船場がある渡の駅に着きました。
ここまでくると、人吉はもうすぐ・・・。
12時13分、列車は終点の人吉に到着しました。

到着した列車はしばらくすると、折り返し整備のため引き上げていきます。

人吉駅と駅前広場は、SL列車運転再開に伴う整備が終わり、新たな装いとなりました。
今回の整備で、新たに設置されたのが、こちら。
かつての人吉機関区の検修庫に近い位置に、「SL展望所」なるものが設けられました。
折り返しのための点検・整備を受ける58654号機を目の前に見渡すことができます。

なお、今回の「SL人吉号」下り列車の様子については、動画を編集しましたので、↓からどうぞ。(新しいウインドウが開きます)
http://www.youtube.com/watch?v=_IDMw7Sr6VE

さて、お昼だけど、どうしようかな・・・。
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