Part1(2004・1〜2)
2004年。3月13日に九州新幹線新八代〜鹿児島中央(西鹿児島)間開業を控え、愛称を新幹線に譲ることになる在来線特急「つばめ」も、いよいよラストの時期にかかってきました。「いちばん楽しい列車になりたい。」のキャッチフレーズでデビューした特急「つばめ」、12年足らずでの終焉、ということには、この列車の旅を味わった方であれば、頭の中をさまざま複雑な思いが交錯していることと思います。
同時に、八代〜川内間の鹿児島本線が第三セクター「肥薩おれんじ鉄道」に移管されるということで、関連する動きもあわただしさを増してきています。
そんななかで私も、これまで幾度となく在来線「つばめ」、そして八代〜川内間の在来線を利用してきた者として、最後のこの時期をいかに見届けるか、という点でいろいろと考えをめぐらせていました。

そういうことで今回の旅行記は、1月と2月の計2回分ということで、最後の時期を迎えた在来線特急「つばめ」の乗車記その他についてとりあげようと思います。
まずは、1月のほうから・・・。
1月23日。
この日から私は仕事の出張で鹿児島へ行くことになっていました。

前日に北九州地区を中心に寒波の影響による大雪が降り、交通機関の運行が大きく乱れました。同時に、福岡〜鹿児島間に定期航空路を持っているJASの機体にエンジン損傷というトラブルが見つかったことで、減便状態が続いていました。
そういうなかで、やはり鹿児島にたどり着くにはJRが一番確実だろう、ということで、特急「つばめ」での往復をすることになったわけなのでした。

朝、黒崎駅に出てきました。
現在、鹿児島線の上下列車が発着する1・2番ホームはエレベーター設置工事が行われている関係で、ホームの通路が一部狭くなっている状態が続いています。

7時24分の発車時刻を若干過ぎてから、門司港始発でやってくる「つばめ3号」が入線しました。
11両編成のうち、西鹿児島まで向かう前7両は787系Bk-7編成。フロントのハロゲンランプが1個切れていますが・・・実はたまに見られることで・・・。(^^;)
せっかくだから、ということで、グリーン料金2450円を手出しして1号車のグリーン車に乗ることにしました。
黒崎発車時点では、はっきりいって空いていました。
黒崎を発車して陣原へ向かう途中。
まだ、前日の雪が残っていました。
雪の残った車窓風景を眺めているうちに、列車は吉塚へ。
箱崎駅をはさんでの連続立体化工事もいよいよ佳境。写真の場所では、博多に到着した特急などが折り返しのための車内整備を行う、引き上げ用の電留線の整備工事が進んでいます。現在の吉塚電留線は吉塚駅のホームと並ぶような位置にありますが、新設される今度の電留線は、ちょうど吉塚駅と箱崎駅の間に位置する格好になります。
「つばめ3号」の博多到着は、3分ほど遅れていました。
ここで、グリーン車には一気にお客さんが乗り込んできて、最前部の「TOP CABIN」を除いてほぼ満席状態になっていました。
博多を3分ほど遅れて発車しましたが、南福岡を過ぎる頃から、窓の外では雪が降り始めていました。
二日市の前後では、「ここはどこの雪国じゃ〜」(笑)と言いたくなるような一面の銀世界。福岡市の中心部と比べるとこのあたりは雪が積もりやすいとはよく言われるんですが・・・。
先行電車がつかえていたこともあって、遅れは徐々に大きくなっていきました。
さて、こちらですが・・・。
「つばめ」のグリーン席には、このようなオーディオユニットがついています。かつてはヒットソングなどいくつかのチャンネルによるオーディオサービスが行われていましたが、どうやら廃止になったようです。
他のお客さんが客室乗務員さんにオーディオ用のイヤホンを持ってきてほしいと声をかけると、客室乗務員さんが「サービスが終わってしまったんですよ。申し訳ございません」と言葉を返す光景も見かけました。
さて、鳥栖のあたりで、グリーン車のドリンクサービスです。
コーヒーカップに日が当たっている、ということで、鳥栖のあたりでは雪がやんでいたばかりでなく、晴れてきていたわけで・・・ほんと、猫の目のような空模様です。

ホットコーヒーを頼んでいましたが、一緒に、1月31日までの期間限定で「つばめ」車内で販売されている「筑紫野ポテト」(200円)を持ってきてもらいました。
原田の田舎卵と鹿児島の紅さつま、という、「つばめ」沿線の素材を使用したスイートポテト。さつまいも本来の甘さが程よい感じで、なかなかのものでした。
久留米、大牟田と停まっていきますが、沿線ではもう雪がなくなっていました。

大牟田を出て、熊本県内へ。
右手に、遠く島原半島の雲仙普賢岳の姿が見えます。やはり、雪をかぶっているみたいですね。
熊本で列車は後ろの4両を切り離し、10分遅れで発車。さらに南下を続けます。
ここは、川尻の手前、白川を渡る橋梁ですが、ここにもすでに九州新幹線用の橋梁が出現しています。
新八代以北の新幹線開業も予定より早まる、なんて話も出てきている今日この頃、複雑な心境ですねぇ・・・。
さて、列車は新幹線部分開業の起点となる新八代にさしかかります。

すでに、この新八代は「信号場」として位置づけられており、鹿児島本線から新幹線ホームへ向かうアプローチ線も列車が走れる状態です。実際、2月28日から予定されている新幹線「つばめ」試乗会では、熊本とこの新八代の間に試乗客の専用輸送列車が設定されて、新幹線開業後の特急「リレーつばめ」と同じくこのアプローチ線を走り、新幹線ホームでの新幹線「つばめ」との乗り継ぎを体験できるようになっているとかで・・・。
もちろん、新設となる在来線ホームも整備が進んでいまして、ほぼ完成、という状況になっていました。
ここには、肥薩おれんじ鉄道の列車も南から乗り入れてくることになっていまして、列車折り返しのためのポイントもすでに設置されていました。
お昼にはまだ時間があるんですが、なにぶんお腹が空いてきてしまったので(笑)、ワゴンサービスからお弁当を買い求めました。
熊本駅の構内営業でもおなじみ、音羽家さんの幕の内風の駅弁「すいぜんじ」(970円)。「つばめ」の車内販売メニューには載っていない品ですが、たまにワゴンに載っていることがあるそうで、せっかくということでいただくことにしました。
おかずの品数がけっこう多くて、お腹いっぱいになりました。(^^;)
列車は八代を出て球磨川を渡り、やがて八代海沿いの区間へ入ってきました。
天気はいいようですね。
特急が走らなくなっても、この車窓風景はきっと、鉄道旅を愛する人たちの語り草になっていくんでしょうねぇ・・・。
「つばめ3号」はやはり10分遅れで佐敷に到着します。
上りホームには、試運転中と思われる肥薩おれんじ鉄道の気動車・HSOR100形が停車していました。

なお、肥薩おれんじ鉄道に移管される各駅では、ホームのかさ上げ工事が進捗しています。気動車の乗降口にホーム高さを合わせることが目的です。
列車はさらに南下を続け、まもなく津奈木にさしかかります。

そういえば、さきほどから上りの「つばめ」との離合がありません。さきほど肥後田浦でも、「つばめ6号」との離合の予定でしたが同列車は現れず・・・。何かが起こったようです。
その真相は・・・。
ここは、津奈木駅です。ここでもホームのかさ上げ工事が行われていました。

通常、「つばめ3号」はここでは乗客停車も、運転停車もないはずなんですが・・・と思っていると、窓の外を787系「ニューつばめ」の車体が横切っていきました・・・どうやら、遅れている上り「つばめ4号」のBk-2編成のようです。

聞いたところによると、この日は鹿児島線草道〜上川内間で、この「つばめ4号」が踏切事故に遭遇したということで、上りの「つばめ」には大幅に遅れが出ていたんですねぇ。
列車はやがて、新水俣駅の付近にさしかかります。
鹿児島線の線路沿いに新幹線の新駅が設置されていますが、もちろん在来線のほうにも駅ホームが・・・ここは肥薩おれんじ鉄道の駅としてオープンすることになるわけですね。
「つばめ3号」はさきほどの「つばめ4号」との行き違い停車もあり、14分遅れで水俣に到着しました。
到着時に、通常と到着ホームが異なる旨の案内がありました。それもそのはず、本来の到着ホームには、遅れていた上り「つばめ6号」の787系Bk-13編成が停まっていました。
まさしく、「つばめ」が雁行している・・・。(^^;)
水俣を出てさらに先へ。
ここは米ノ津。ここで再び上り「つばめ」との離合です。
「つばめ8号」には、787系Bk-4編成が充当されていました。この編成は、「つばめ」に入っている787系7両編成12本のうち、この時点で唯一の原色シルバーの編成となっていました。

20数分のうちに、上り「つばめ」3本と離合。事故の影響とはいえ、こんなこと、めったにあることではありません。
列車はまもなく出水に到着です。
このあたりでは若干、雪が残っていました。

出水平野、といえば、冬には大陸からマナヅル、ナベツルなどのツルが越冬のために南下してきます。
出水駅構内の掲示によれば、この冬は12024羽のツルがこの出水にやってきている、とのことでした。
ここで、再度ドリンクサービスをお願いしました。
食後、ということもあって、眠気覚ましにブラックコーヒー。
徐々に遅れは拡大していますが・・・雪の降った昨日には、鹿児島県内でもポイント不転換を起こしたところがあったと聞いていますが、きょうは本当にその点では影響がなくて、よかったですよ。
阿久根を出て、列車は東シナ海を望める区間へ。

ここは、牛ノ浜の駅。こちらが遅れているということもあって、ここで上り「つばめ10号」と行き違います。向こうは、787系Bk-14編成で運転されていました。
東シナ海沿いを走っていきます。
空模様は少し怪しくなってきましたが、雪が降り始めるという状況ではありませんでした。
このように海岸を望みながら走っていきますが・・・波も穏やかなようです。
「つばめ3号」は川内に到着しました。
上りの遅れの影響もあり、ここですでに遅れは20分を超えていました。

写真には写っていませんが、新しい駅舎もほぼ完成しているようでした。
列車は串木野、伊集院と停車し、西鹿児島への道のりを急いでいました。
ここは、西鹿児島のひとつ手前、上伊集院を通過するところ。
このあたりは複線ということもあって、かなり飛ばしていました。
鹿児島の市街地へ入り、まもなく西鹿児島、というところ。
右手に見える鹿児島総合車両所の敷地内に、塗装のあせたこちらの485系電車。3両編成ですが、どうやら保留車として長らく放置されていた車両のようです。
3月13日のダイヤ改正で特急「きりしま」の増発、あるいは別府での「ソニック」「にちりん」の乗り継ぎ設定の拡大など、鹿児島総合車両所の485系は運用増となることが確実な状況です。ということで、この車両も保留からの復活、ということになるのかなと。
12時25分、「つばめ3号」は終点・西鹿児島に到着しました。
結果的に20分以上遅れての到着となりました。しかも、到着ホームもいつもとは違う4番ホームに。

隣の5番ホームには、これから博多へ向かう「つばめ14号」の787系Bk-3編成。787系「つばめ」のうちで、真っ先に黒い「ニューつばめ」の装いになった編成です。
こちら、西鹿児島駅のコンコース内にある新幹線開業に向けたカウントダウン。
1月23日、ちょうど開業まで50日。早いもんです。
西鹿児島の駅前に出てきました。
さすがに鹿児島、暖かいですねぇ・・・。

この日はこのあと、ずっと仕事のスケジュールが入っていました。
明日は復路になりますが・・・。
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