(2002・11)
2002年秋もいよいよ大詰めの11月28日。平日の休みを使って、「つばめ」で鹿児島へ下ってみることにしました。
今年はすでに何度も「つばめ」で鹿児島へ行っています。しかしながら、鹿児島市内での足跡はいままでほとんどなし。敢えて挙げれば、城山と平川動物公園くらいですかねぇ。
それに加えて、九州新幹線部分開業を控えて「つばめ」のビュッフェがいよいよその数を減らしていることもありましたし、この際だから、気分転換を兼ねて行ってしまおう、ということで出撃を決定。決断したのは出発の2日前、というドタバタぶりでしたが、果たして・・・。
朝の黒崎駅。
ここから「つばめ3号」西鹿児島行きに乗車します。
この日の編成は、787系Bk-10編成。もともと6連運用だった編成ですが、3号車に今年8月増備の新車・サハ787-115を連結して7連化されました。
こちらがそのサハ787-115の車内。
内外装ともにはじめから新幹線接続「ニューつばめ」仕様となっていますので、シートモケットもこちらの茶色系のものになっています。
そして、4号車・サハシ787-10のビュッフェ。後期仕様で、イスがついています。

この「つばめ3号」は通勤や熊本への通院などで使っている列車ではありますが、この「3号」へのビュッフェ連結も、この旅の翌日11月29日までで終わり、ということになっていました。
先週も熊本通院でこの「3号」のビュッフェのお世話になりましたが、今回が文字通り、私にとっては最後ということになるでしょう。
博多に到着。
通勤ならここで降りますが、きょうはそのままビュッフェに居座ります。

指定席はとってはいたんですが、隣の席になんだかそりの合わなさそうなオジサンが来てしまいまして、しかも西鹿児島までのきっぷを持っていたのを見て、あーちょっと逃げてよっ(笑)とか思ってしまいましてね。

ビュッフェにはたくさんの食材や飲み物が積み込まれ、乗り込んできた3人の客室乗務員さん(うち1人は鳥栖まで乗務の営業準備要員のようですが)が慌しく仕分けを行っています。
鳥栖到着を前にビュッフェの営業準備が整いました。
ワタシもカウンターへ移動し、こちらのミートスパゲティを注文。冬場恒例の「コーヒーフェア」期間中でもあり、コーヒーはその「フェア」のアイテムであるモカブレンドを注文しました。
久留米到着を前に、列車は筑後川にかかる鉄橋の手前で突然信号停車で停まりました。しばらくして動き出したかと思うと、列車は通常の1番線ではなく、2番線へと入線していきます。1番線には813系の普通電車が停車中・・・。
久大本線で踏切支障があったとのことで、その関係で足止めを食ったようでした。
スパゲティを食べ終わってもなんだかお腹の虫がおさまらない(笑)ので、トランドールのサンドイッチを注文しました。
トランドールはJR九州の関連会社で、主な駅の構内でパン屋を営んでいます。私もときどきここのパンやサンドイッチは食べますが、値段のわりになかなかの内容のものが多い感じがします。
大牟田を発車しましたが、列車は10分ほど遅れている様子。

雲仙普賢岳が見えてきました。少しかすんでいましたが・・・。
まだ食べられそう(爆)ということで、写真の「つばめ三色あんぱん」と、ミックスナッツを注文です。
この「三色あんぱん」は文字通り三色のあんが入ったものです。130円と値段も手ごろで、けっこう売れ行きもいいのだとか。
熊本に着きましたが、依然として列車は10分ほど遅れていました。
さきほどの一件もあって、もう席には戻らないことにしよう、と決めていたので、そのままビュッフェにとどまります。
こちらは宇土付近。
ここは九州新幹線の2003年度開業区間ではありませんが、すでに高架が立ち上がり始めています。
新八代以北の工事も、少しずつ進んできていますね。
こちらは新八代駅の工事現場付近。
在来線からのアプローチ部分もかなり出来上がっており、写真には写っていませんが駅舎のほうも、周囲に広がる田園地帯のなかでその威容を現してきていました。
八代を出て、ワタシの旅行記では何度も紹介している八代海沿岸の区間へ。
客室乗務員さんのアナウンスでは、「海の上を滑るように走る」という比喩が使われますが、ここは海岸線のすぐそばを走るので、下のほうが見えないと確かに、まさしく海の上を走っているかのように見えてしまう区間です。
本当に、新幹線ができれば「つばめ」がここを走らなくなってしまう、というのがもったいない気がします。
こちらは湯浦付近。
以前から立ち上がっている新幹線の高架ですが、この日の時点ではすでに架線も張られており、下から見上げている限りではいつ新幹線車両が走ってきてもおかしくないような状態になっていました。
「つばめ3号」は出水に到着です。

出水といえば、冬場はクロツル、ナベツルなどの飛来地としてニュースに登場することも多いところ。ワタシもこれまで、何度か「つばめ」の車窓からツルの姿を目撃していました。
この日も、西出水付近で、線路から程近いところにいるツルのつがいを目撃しましたが・・・。ただ、客室乗務員さんの話では、「最近新幹線の高架が出来た関係で、以前と比べると列車から近いところで見られないことが多くなりました」ということで・・・。
列車はさらに南下を続けます。

こんどは阿久根の手前から東シナ海沿いの区間に入っていきます。
青空と海。波頭に太陽光が反射して、本当にきれいでした。
そろそろ、ビュッフェでの時間を締めに入りましょう。
最後にこちらの栗アイスを注文します。10月に鹿児島総合車両所の一般公開に行った際、やはり「つばめ」車内でこちらを食べたんですが、栗の実のかけらがけっこうたくさん入っていまして、一発で気に入ったのを覚えてましたので。
一応、季節限定品とのことでしたが・・・。
列車は伊集院に到着しました。
運転士さんの必死の操縦と、対向列車との行き違いでの時間調整の結果、列車の遅れはなくなっていました。

そろそろビュッフェを後にしましょうか。
ほんと、長居しちゃってすいません、という感じでしたが。
12時3分、「つばめ3号」は西鹿児島に到着しました。

果たしてあと何回、「つばめ」で西鹿児島に来れるんでしょうか・・・。
今回は市内オンリーと割り切って、さっそく移動します。

西鹿児島駅前から鹿児島市電に乗ります。
下車したのは、こちらの天文館。鹿児島市内随一の繁華街です。
昼飯をどこかで食べたいということで、現地リサーチを開始。そして、たどり着いたのは・・・。
こちらのお店。薩摩黒豚料理「黒福多」鹿児島本店です。
観光ガイドブックなどにも登場する有名店で、東京・赤坂にもお店を出しているとか。

ここ鹿児島産の黒豚はもともと、中国から沖縄(琉球)を経由して伝わってきたものだそうで、近年はイギリスバークシャー種との交配など品種改良を経ています。飼料としてサツマイモを使っていることも、有名な話です。
店内に入り、黒豚ロースカツ膳(1600円)を注文しました。

・・・と、まずはつけ出しが出てまいりました。
左の焼きナスもよかったんですが・・・真ん中のエビはお店の人に「殻ついたまま食べられますので」といわれてそのとおり食べてみたら、確かに殻がやわらかくなってました。
そして、こちらがメインのロースカツ膳。
手前のほうが黒豚ロースカツですが・・・。やはり、というか、サクサクとした感じで非常に歯ざわりがいいですよねぇ。脂身も非常にやわらかく、普段トンカツで脂身を食べるのに苦労しているのとはえらい違いでした。やっぱり、ものが違います。(^^;)
ちなみに、こちらのお店では、トンカツソースもオリジナルのものを用意していましたので、ごまを混ぜて付けだれ風に食べましたが、なかなかいける味でした。

黒豚は久々に食べました。いや〜うまかった。
昼食後、城山の方向へ歩くことにしました。

こちらは、西郷隆盛像。「西郷さん」の像といえば、上野公園のものが有名ですが、こちら鹿児島の「西郷さん」は軍服姿でした。
さらに進み、遊歩道を歩いて城山へ登ります。

けっこう距離があるのかなと思っていたんですが、実際はそれほどでもなく・・・。
・・・ほどなくして、こちらの景色とご対面です。
鹿児島市街を一望できる城山展望台からの眺め。正面に見えるは、もちろん桜島です。
噴煙も上がっておらず、霞んでもいなくて、非常にきれいな姿を眺めることが出来ました。

この景色に、思わず一首・・・。

晩秋の 風爽やかな 青空に 雄々しき姿 桜島映ゆ

お粗末さまでした・・・。(^^;)
城山からは、こちらのバスに乗って移動です。

レトロ風車体のこちらのバスは、鹿児島市交通局が運行している「カゴシマシティビュー」。西鹿児島駅を起点に、市内の観光名所をめぐる周遊バスなんですが、これがなんと、どこまで乗っても運賃が1回180円! 600円の1日乗車券を買えば、それこそ乗り降り自由ということで・・・。
昼間は30分に1本の割合で運行されており、鹿児島市内をまわるには本当に便利です。
そして、そのバスでやってきたのはこちら。

「仙巌園」(せんがんえん)というところなんですが、ここはかつての薩摩藩主・島津家の庭園です。1658年に島津光久がここに別邸を建てたのが始まりといわれます。
写真は正門。
こちらの庭園の特徴は、桜島と錦江湾を「借景」、つまり庭園の背景として利用していることなんだそうで、園内からはこのように桜島が望めるようになっています。

けっこう広いんで、もう少し歩いてみましょう。
こちらの建物は磯御殿。もともと島津氏の別邸として建てられたもので、明治維新以後には本邸として使われたこともあったとか。
ちなみに、ここの「仙巌園」の入園料は1000円(後出の「尚古集成館」と共通)ですが、500円を追加するとこの御殿のなかにも入れるとかで・・・。
御殿の横には、このように池が。
この他にも、園内には屋根を錫でふいた門があったり、曲水の庭もあったり、孟宗竹の竹林(江南竹林)があったりということで・・・。
で、ふと園内から背後の山のほうを見上げてみると・・・。
そこにはこのようなものが・・・。
こちらは「千尋巌」といいまして、高さ11mもの「千尋巌」の字が岩石に刻まれています。こうして岩に字を彫ったものを庭園内(そう、この山も一応庭園内・・・)に設けるというのは中国文化の影響ではないかといわれます。
「仙巌園」を出て、こちらへやってきました。こちらは「尚古集成館」。島津氏関連の史料を展示している博物館です。
で、この建物(本館)はもともと、島津氏が幕末に機械工場として建てたもの。このあたりには反射炉・溶鉱炉など軍需関係の工業設備のほか、ガラス工場、鍛冶場、鋳物細工所などといった設備があったといい、当時としては先進的な工業エリアとなっていました。
さきほどの「シティビュー」のバスに乗って、西鹿児島駅まで戻ってきました。
ホームへ降りてみます。駅舎の上に、新幹線ホームを新設する工事がまさしくたけなわ、といったところです。
そして、ワタシが帰路に乗る列車が、鹿児島総合車両所から回送されてきました。
「つばめ24号」博多行き。この日は787系Bk-6編成での運転ですが、ビュッフェ連結編成で運転されるのはこの日が最後、ということになっていてですね・・・。

12月1日に東北新幹線の八戸延伸があって、在来線のほうも様変わりしてしまうわけなんですが、2003年度内には九州新幹線の新八代〜西鹿児島間開業で、在来線のほうがまた大きな変化をすることになるわけで・・・。
そのときには、この西鹿児島から「つばめ」が姿を消すわけですもんね。
新幹線ができたあとは博多〜新八代で新幹線アクセス特急としての活路を見出すことになるとはいえ、この787系「つばめ」はビュッフェの存在も含めて、もともと長時間乗車を前提に作られている車両でしたから、運行距離が短くなれば満喫できなくなるなぁという思いは非常にありまして・・・。
帰路はグリーン車にしました。それも一人がけのシート。

二人がけだと、誰か隣に来てしまうと気を遣ったりしてのんびりできませんし。
列車は17時25分に西鹿児島を発車し、暮れゆく空のもと、スピードをあげていきます。
グリーン車のシートサービスのウーロン茶を飲んで、しばらく車窓の眺めを見ていましたが・・・。
時間が時間だけに、ということで、ビュッフェへやってきました。

メニューとしては、まずピリ辛ビーフン、そしておつまみ系のものということで・・・。
時間が時間ですし(爆)、ビールをあけました。
強引に補正をかけたので写真がちょっと変な感じになってしまいましたが、ビールをあけたあとはワイン、ということで・・・。

この日の「24号」はお客さんが少なく、ビュッフェにもほとんどお客さんはいません。結果として、客室乗務員さんと話しこむことに・・・。
このビュッフェの特徴の一つであるエッグラインの天井です。
非常に奥行きを感じさせるものでもあるわけですが、そこに、このライトの灯りが当たっている感じが、なんともいえません。

「つばめ」の787系がデビューしてすでに10年が経過していますが、こうした車両内の様々な意匠については、まったく古さを感じないというか、いまの時点から見ても非常に斬新なものだというふうに思います。

このビュッフェは「展望車両」という位置付けがされている車両ですから、昼間はもちろん景色を楽しめる空間なわけですが、ライトの光の温かさがにじむ夜のビュッフェの雰囲気というのは、本当に絶品です。
この空間がなくなってしまうなんてねぇ・・・。
そうこうしているうちに、列車は熊本に到着。時刻はもう20時。
そろそろ、席に戻ることにしましょうかね・・・。
ほんと、ごちそうさまでした。
席へ戻り、ワゴンサービスからバニラアイスを買って食べたあと、シートサービスのコーヒーを注文しました。

大きなシートに身をゆだね、のんびりまったりと過ごせるこの時間がずっと続いたら・・・なんてつい思ってしまうんですが・・・。
21時17分、「つばめ24号」は博多に到着しました。

すでに、行先幕は次の運用である「きらめき 門司港」に変わっていました。
「つばめ」でビュッフェつきの列車を探すほうが大変になってきたこの時期に、往復ともビュッフェのある列車に乗ってきたわけですが、もうここまでのことはできないでしょうね。
またそのうちビュッフェで、と気軽に書けなくなってしまったのが、妙に寂しいです。鹿児島へはまた行ってみたいと思いますけど。
<おわり>